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「学校に行きたくない」考

昼寝する女の子
9月に入り、二学期が始まりました。
この時期になるといつも思い出すことがあります。それは、昔の自分自身。「学校に行きたくないなあ」という思いにとらわれながら、仕方なく登校していた幼い自分の姿です。
 
子どもから「学校に行きたくない」と言われた時、親はどのような気持ちになるのでしょうか。子どもが学校でいじめられているのではないか、勉強が遅れてしまうのではないか、そして、このまま学校に行けなくなってしまうのではないか・・・。子どものことが心配で、子どもの将来が不安で、つい「学校に行きなさい」と登校を強くすすめてしまうこともあるのではないでしょうか。
子どもの不登校に遭遇した親は、①戸惑いを感じ、②なぜ学校に行かないのかと叱咤(しっせき)し、③登校を無理強いする、というパターンに陥ってしまうことがあります。
しかし、親から「どうして学校に行かないのか?」と聞かれたとき、その理由を明確に答えられない子どもも多く、答えられないことでますます親に話せなくなってしまう場合も少なくありません。
 
さらに言えば、「学校に行きたくない」とはっきり言ってくれる子どもの方が、まだ親にとっては分かりやすいかもしれません。昨日の夜は元気だったのに、翌朝になると「お腹が痛い」「頭が痛い」といった症状を訴え、学校を休む場合もあります。
身体症状や倦怠感は、上手く言葉にできない心の状態を言葉の代わりに表現するものであったり、当人にも意識されていない心の状態からつくられるものであったりします。
心のつらさを言語化するよりも先に、身体の反応を敏感に認識することがあるのだと知っておくだけで、子どもの心に少し向き合いやすくなるかもしれませんね。
 
子どもが「学校に行きたくない」と思う時、そこには様々な理由が“こんがらがって”存在しています。そういった複雑さを言葉で上手く説明するのは、とても難しいことです。親に聞かれても答えられないし、自分でもよく分かっていないかもしれません。
子ども自身が自分の心の中にある気持ちを言葉にできるようになるまで、じっくり待ってあげることが大切ではないでしょうか。
 
ちなみに、幼い私が「学校に行きたくないなあ」と思っていた理由は・・・やっぱり、いろいろあったようです。大人になった今でも、理由の全てを理解できているわけではありませんから、当時の私はもっと“こんがらがって”いたことでしょう。
ちなみにちなみに、私の親もやはり、①戸惑いを感じ、②なぜ学校に行かないのかと叱咤(しっせき)し、③登校を無理強いする、というパターンでした。今となっては懐かしい思い出ですが、当時の親にとっては一大事だったようです。
大人になった私は「あれは子どものことを真剣に思うからこそ、だったのだな」と、親の行動を理解していますし、感謝もしていますが・・・子どもの頃の私はどう思っていたでしょうか。当時の自分の気持ちを覚えていないのが残念です。
 
参考文献:
柴祐子,宮良淳子(2016).登校していた時期から不登校となり,不登校を続けていく当事者の思いのプロセス.日本看護研究学会雑誌,40(1),25-34.
川島一夫,征矢野達彦,小松茂美(2017).不登校児は、なぜ学校に行かれないのか Ⅲ ― 発達心理学の諸理論からの不登校についての考察 ―.教育総合研究,1(139-155)
 
2023年09月09日 10:35

「ひきこもり」考

手のひらのひよこ
「子どもが家にずっといて、学校に行こうとしない。どう対応したらいいか分からない」
「家族が長年ひきこもっている。このままの状態が続くのだろうか。将来が不安だ」
カウンセリングの中で、このようなご相談を受けることが多くあります。
日本にどのくらいひきこもっている人がいるのか、その正確な数は分かりませんが、疫学調査では≪低めに見積もっても約23万2千世帯に、ひきこもり状態にある人がいる≫と報告されています。
また、ひきこもり状態の人がいるのは日本だけではないようで、アジア圏やヨーロッパの国々にもひきこもり状態にある人が存在することが指摘されています。
 
「ひきこもり」について厚生労働省は『様々な要因の結果として社会的参加(就学、就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6か月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)』と定義しています。
また、ひきこもり状態になることの背景として疾患や障害の存在・影響も指摘されており、サポートの際には医療や福祉との連携が必要となる場合も少なくありません。
だからこそ家族だけで抱え込むのではなく、医療や福祉をはじめとする様々な相談機関に助けを求めていただくことが重要となります。
 
ひきこもり状態にある人やその家族は、それぞれ異なる経緯や事情を抱えています。そしてひきこもり状態の人やその家族に対する世間のまなざしも様々です。穏やかに見守る人もいれば、興味すら持たない人もいます。
中には「そもそも甘えているだけではないのか」「皆つらくても頑張って社会の中で生きているのに、つらいことから逃げて楽をしているだけだろう」といった厳しい見方をする人もいます。確かに、そういった考え方になるのも、理解できなくはありません。
ですが、ひきこもり状態にある人自身が自分のことを責め続けていたり、自分自身を傷つけたり(または家族を傷つけたり)、といったことを日常的に行っている場合があります。本人も家族も、周囲に上手く甘えられない。嫌なことや、つらいことから上手に逃げられない。それは「楽をする」とは真逆の状態ではないでしょうか。
また、“社会”から手厳しく批判されることによって、さらに自分自身を責め、“社会”からの孤立感を深めてしまう場合もあります。そうなるとより一層、自ら周囲に助けを求めることが困難になってしまいます。
 
“誰にとっても安心して生きていける場所”は、今この世界のどこに存在しているのでしょう。
そんな場所はない、自分には決して見つけられないし、つくることもできない、と絶望とともに痛感したとき、誰だって恐怖で身動きがとれなくなってしまうのではないでしょうか。
そしてその恐怖は、明日私の中に湧き上がるかもしれない、と切実に思うのです。
 
現在ひきこもり状態にある人、そしてそんな人や家族をそばで見守りながら心を揺らしている人。
今感じているつらさや歯痒(はがゆ)さ、不安、そして怒りなどを、少しずつでも言葉にしてみませんか。
もしよろしければ、あなたの言葉を聴かせてください。

参考文献:厚生労働省「ひきこもり支援施策について」
          「ひきこもり支援に携わる方のためのヒント集」 他
2023年09月02日 17:44

だれかに相談するということ ―2―

金魚
スティグマが邪魔をするとき
困った時や悩んで動けなくなった時、誰かに相談するかどうか、誰かに助けを求めるかどうかは、本人の意思によるものです。しかし、苦しみや、気持ちの混乱が長く続くと、時に深刻な心身の問題につながることもあります。できることなら早めに遠慮せず、信頼できる人にご相談いただければと思います。
 
“苦しいときや困ったとき、誰かに相談する”という行動を自ら選択するためには「相談することが自分にとって利益になる」と実感できることも重要だと思います。もし「相談すると、何らかの不利益を被(こうむ)るかもしれない」と考えてしまったら、誰にも相談できなくなってしまうのではないでしょうか。
 
では、「相談すると不利益を被(こうむ)る」という考えは、どうして生じるのでしょう。
ここで問題となるのがスティグマ(stigma)です。
スティグマとは、特定の人や集団に対する間違った認識や、根拠のないネガティブな意味づけのことです。アメリカの社会学者ゴッフマン(Goffman, E)は、スティグマについて「それをもっていると否定的な意味で『普通(正常)ではない』と見なされてしまう、もしくは見なされてしまう可能性のある“しるし”である」と説明しています。そしてスティグマという言葉は、日本語の「差別」や「偏見」などに対応しています。
 
スティグマにはいくつか種類があり、その中の『セルフスティグマ』と『パブリックスティグマ』が「相談すると不利益を被(こうむ)る」という考えにつながりやすいのではないかと思います。
『セルフスティグマ』は、自分自身に対して抱くスティグマのこと、そして『パブリックスティグマ』は、社会の中で広く一般の人が抱いている(と思われる)スティグマのことです。
例えば、「自分の悩みを自分で解決できないダメ人間だと、自分自身で思いたくない。だから人には相談しない」「自分はメンタルヘルス不調だから、価値のない人間だ」などと考え恐れることが『セルフスティグマ』に当たります。
そして、「精神疾患になるのは心が弱い人だ」という誤った理解や、「精神疾患をもった人を雇わない」という差別的な行動などが『パブリックスティグマ』として挙げられます。
 
これらのスティグマが自分自身にどう影響しているか、と考えてみることも時には必要です。
多くの人は「スティグマなんて、自分には関係ない」「自分は差別や偏見の目で人を見たりしない」と思っているかもしれません。しかし実際には、誰でも大なり小なり偏見や思い込みをもっているものです。
特に、「人に助けを求めるのは苦手だ」という方、また「人に簡単に助けを求めている人を見ると、何故かモヤモヤする」という方は、その苦手意識やモヤモヤ感がどこからやってきているのか、という視点で自分を振り返ってみることも大切かもしれません。
 
「そうはいっても、自分一人で考えるのは何だか不安だな」と思う時は、私たちと一緒に考えてみませんか。
カウンセリングは、そういう役割も担っているのですから。
 
参考文献:「スティグマの社会学―烙印を押されたアイデンティティ」アーヴィング ゴッフマン著
     国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域精神保健・法制度研究部ホームページ
2023年09月01日 23:13

だれかの困りごとに熱心になりすぎてしまうとき

あじさい
ー それはだれの問題? ー
親しい人、家族だったり、友人だったり、恋人だったりが悩んでつらそうにしていると、心が苦しくなります。当たり前ですよね…。励ましたり、なぐさめたりしてなんとか元気になってもらいたいって思います。
では、こんな場合はどうでしょう。友人に恋人から暴力を受けていると相談されたとき。なんとかしてあげたい、助けたいと思います。自分でも情報を集めて助言をしたり、友人を守る手立てはないか、恋人から離れさせることはできないかとあれこれ考えるかもしれません。

ところが、こちらの熱心さとは裏腹に、友人は暴力をふるう恋人から一向に離れようとしないとき、あなたはどうしますか。
もっと真剣に友人に助言をして、なんとか助ける方法はないか考え、必死に説得しようとし、いつの間にか、頭の中はそのことでいっぱいになる。そうして、こんなに必死に考えてあげているのに、友人が自分の思ったような反応をしない場合、友人に対して怒りが出てくるとしたら。もしも、そうだとしたら、要注意。ちょっと立ち止まってください。

過去に同じような苦しみを体験した人は、自分の苦しみが思い出されて自分事のように感じてしまっているのかもしれないし、身近な人を苦しみから救うのは自分の責任だと強すぎる責任感が働いているのかもしれません。子どものころ、親御さんが支配的で、不都合なことを自分のせいにされ続けると、過剰に責任を感じてしまいやすいことも知られています。

もし、あなたが人の問題に巻き込まれやすく、人のことなのに自分のことのように感じすぎてしまうなら、自分と人との間にある境界線を見直してみてください。それはだれの問題で、どこからが自分の問題なのかを見つめ直してみましょう。
2023年06月23日 19:37

子どものかんしゃくにどう対処する?

こどものケンカ
幼い子どもたちと日々とぎれなく付き合うことはとても大変。めちゃくちゃエネルギーを使いますね。
特に、子どもが落ち着きなく動き回り、多動気味のタイプであれば、親も非常に体力を消耗するし、子どもを危険から守るために頭の方もフル回転させていなくてはなりません。児童精神科で働いていた時、多動タイプのお子さんを連れてこられる親御さんたちが一様に疲れていた様子が思い出されます。

うちの子どもも幼少期は多動タイプで、食事中もテーブルの周りをくるくる歩き回り、しゃべりながらごはんを食べていたものでした。特に困ったのはかんしゃくで、かっとなると足をバタバタさせて泣きわめいたり、手近にあるものをつかんで投げつけたり。
そんなとき、役に立ったのは、「ADHDのペアレントトレーニング むずかしい子にやさしい子育て」(シンシア・ウィッタム著 明石書店)という本です。日本語タイトルにはADHDとありますが、原書はすべての子どもたちに向けて書かれたものだそうです。
子どもがかんしゃくを起こして手に負えないときの対処法がとても具体的に書かれています。ただ、エッセンスをまとめると、「子どもがいいふるまいをしたらほめる(肯定的な注目を与える)」「子どもがかんしゃくなどしてほしくない行動をしたら無視をする(注目を取り除く)」ということです。そして、「かんしゃくなどしてほしくない行動が収まったら、子どもに注意を向ける」ことです。

たとえば、学校の宿題で、算数のプリントに取り組んでいるとき、かんしゃくを起こして、プリントをぐしゃぐしゃに丸めて放り投げた場面。親はなんの反応もしないようにします。もちろん、叱らない。怖い顔もしないし、ため息もつかない。そうして、かなりの時間がたって、もし放り投げたプリントを自分から拾いに行って、もう一度取り組み始めたら、ここぞとばかりにほめる。
お菓子がほしいのにお母さんがくれないからと足を踏み鳴らして大声で泣きわめくとき。やめるように叱ったりせず、放っておきます。ましてや、お菓子を与えることは決してしません(お菓子をあげると、よけいに足の踏み鳴らしと泣きわめき回数を増やしてしまいます)。長い時間が過ぎ、ようやく自分で怒りを鎮めることができたら、すぐに子どもに注意を向け、落ち着けたことをほめてあげます。
この方法を使うようになって、親子間での険悪な雰囲気がなくなり、親としての心身の消耗度合いも減って、ずいぶん楽になったのを覚えています。
2023年06月22日 21:53

子どもを叱りすぎて、疲れていませんか

子育て01
子どもが元気に過ごしている姿を見るのは親にとっての喜びですが、そうは言っても、子育ては楽しいばかりではありません。とくに、子どもと1対1で向き合っていると、煮詰まってきてつらくなってしまうことも時にはありますよね。
「子どもを叱ってばかりで、もうへとへと…」叱っても叱っても効果がない、もうどうすればいいの、ということもあるかもしれません。

子どもは成長途上にある存在ですから、次々と失敗や間違いをやらかします。そんなとき、親は注意をしたり、叱ったりするのですが、子どもは同じ失敗をくりかえしてしまう。子どもからすると、自分は叱られてばっかりのダメなやつだ…となりかねません。
親としてはよかれと思ってしていること。そして、親としても、叱ってばかりいたくない。
では、どうすればいいのでしょう? 失敗や悪い行動は目立つので、見つけようとしなくても目を引くものです。でも、良い行動は目立たないし、場合によっては「あたりまえ」だとスルーされてしまいがち。だからこそ、ぜひ、積極的に子どもの良い行動を見つけてみましょう。そして、見つけたら、ほめてあげてください。
自分から宿題を始めたとき。きょうだいで仲良く遊べているとき。ちょっとした小さなお手伝いをしてくれたとき。ごはんを全部たいらげたとき。しっかりはみがきができたとき。楽しい絵を描いたとき…
ほんのささいなことでいいんです。「うちの子にはいいところなんて全然ない」そんなことはありません。どんな子も、必ずいいところがたくさんあります。

でも、もしなかなか見つからないとしたら、注目されないことで影をひそめてしまったのかもしれません。行動理論では、メリットがあれば、その行動は増えることが証明されています。逆に、メリットがないと、その行動は減ってしまい、ついにはなくなってしまうんです。たとえば、私たちも買い物をするなら、ポイントがつくとか何かメリットのあるお店に行きませんか。
子どもの行動も同じです。メリットは親からの注目。良い行動が注目されるなら良い行動が増えます。良い行動への注目がなく、叱られるときにばかり注目されるなら、注目してほしいがために叱られる行動をとってしまうこともあります。
だから、ぜひ、叱りポイントではなく、ほめポイントをたくさん探して、まずはほめてみませんか。少なくとも、叱る回数よりも、ほめる回数が多いように。
そうすると、子どもの望ましい行動が増えるので、叱りポイントが目立たなくなり、叱ることに注いでいたエネルギーも減り、親も疲れないし、子どももうれしくなり、親子の関係も良くなります。

だけど、もし、ほめどころがうまく見つけられないなら、一緒に見つけるお手伝いをしますので、ぜひ、カウンセリングルームにお越しください。
2023年05月21日 15:53

だれかに相談するということ ―1―

子猫たち
「相談しても意味がない」?
カウンセリングの中で「自分は誰にも相談しません。今までもずっとそうしてきました」とおっしゃる方にお会いすることがあります。
「どうしてですか?」とおたずねすると「どうせ相談しても解決できるような問題じゃないので。相談しても意味がないからです」と話してくださる方が多いです。
では何故、その方は「カウンセリングに行こう」と思われたのでしょう?
 
「親子関係の問題」や「嫁姑の問題」、そして「職場の人間関係の問題」などは、カウンセリングで“すっきり解決”できる問題ではないかもしれません。
人間関係の問題を根本から解決しようとするのなら、相手と物理的な距離を取る、つまり家族や会社から離れなければならないかもしれません。もしくは、恐れている相手と対峙・対決しなければならないこともあるでしょう。
そしてそのことは、問題の中心で悩んだり困ったり苦しんだりしている本人が一番良く分かっているのではないでしょうか。
しかし、根本解決の方法が分かっていても、それを実行するのは容易ではありません。リスクを背負ったり、痛みを感じたりすることに耐えられない場合もあるでしょう。
そして、根本的な解決方法が分かっていてもどうしようもない、と思うことで、さらに苦しみが増すのではないでしょうか。
また、人間関係で生じる悩みや不安は、たとえ家族と絶縁しても、職場を退職しても、繰り返し起こる可能性があります。「新たな場所、新たな人間関係に身を置けば、もう問題は生じない」という保証はどこにもないからです。
 
カウンセリング効果のひとつに「ものごとの受け取り方や感じ方のバリエーションを増やす」というものがあります。
カウンセリングで「悩み」や「不安」の原因が完全に取り除かれることはないとしても、「悩み」や「不安」に対する受け取り方や感じ方を変化させる(増やす)ことはできるのです。これは「性格を変える」という意味ではありません。あくまでも「ものごとの受け取り方や感じ方のバリエーションを増やす」だけです。
 
暗く、困り果てた顔でカウンセリングに訪れた方が、カウンセリング終了時には「話して良かった」「気持ちが落ち着いた」と笑顔を浮かべられることが多いのは、カウンセリングが「不安」や「苦しさ」や「つらさ」といった相談者自身の感情や受け取り方を否定せず、ただただ聴くことを大切にしているからだと思います。そしてカウンセリングを通じて、相談者自身がものごとの受け取り方や感じ方のバリエーションを増やしていくのが、カウンセリングの基本であり理想でもあるのです。
 
これからも、カウンセリングという場を上手に、安心してご利用いただければ幸いです。
2023年05月10日 14:55

今年の「五月病」は・・・

玄関とベンチ
4月になり、進学や就職など「新生活真っただ中!」という方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
また「コロナとともに生きる」社会へと変化する中、これまでの数年間とは違う春を過ごしておられる方も多いのではないでしょうか。
新しい場所で新たな一歩を踏み出し、慌ただしい4月を乗り切った後、大型連休に突入します。それを楽しみにしておられる方もいらっしゃると思います(もちろん、私も)。
 
今回のテーマは「五月病(ごがつびょう)」です。
5月の連休明け頃、勉強や仕事に対する意欲・関心を失い、無気力な状態に陥ってしまうことを「五月病」と呼んでいます。
 
進学による環境の変化や、学生から社会人になるという環境の変化は、自分が思う以上に大きなストレスを伴います。
そもそもストレスは「変化」や「刺激」によって引き起こされるもので、それがたとえ「良い変化」や「良い刺激」であってもストレスになり得ます。例えば、希望の大学に入学できた、第一志望の会社に入社できた、もしくは昇進した、などなど・・・。
そして、新しい環境や新しい人間関係への適応が上手くいかなかったり、あるいは「適応しなくては」と頑張り過ぎてしまったりすることで、心身の疲労が徐々に蓄積していきます。
 
緊張して気を張り詰めていたため気付かずにいた心身の疲労やストレスが、連休に入って噴出し、自分自身の不調を実感する、ということが起こります。
また、会社や仕事に抱いていた理想的イメージと現実とのギャップから生じた失望感が、休みの間に一気に膨らんでしまい、気力が保てなくなる、といったこともあります。
 
五月病は、一時的な「こころの燃えつき」でもあり、やる気がわかない、何もする気にならない、食欲がない、憂うつな気持ちになる、といった状態に陥るのですが、ほとんどの場合は新たな環境に馴染むにつれ自然と改善します。しかし「こころの燃えつき」が数週間以上続くと、学校や会社に行けなくなるほど深刻化してしまう場合もあります。
 
「新しい環境に入った時は、心身に大きなストレスがかかるものだ」と知っておくだけで、気持ちが少し楽になるかもしれません。また「入社したばかりなのに、どうしてこんなに疲れているのだろう」と不安になった時、「疲れるのは当たり前。変化はストレスだから」と考えることができると、少し安心できるかもしれませんね。
 
私たちは社会の中で生きる限り、変化と無縁ではいられません。コロナ禍、進学や就職、家族関係や友人関係の変化、自分自身の変化・・・etc。生きるということは、常に変化と隣り合わせです。そしてそれは、ストレスとも隣り合わせだということに他なりません。
今年の「五月病」が、果たしてどれくらいの猛威を振るうのかはわかりませんが・・・社会がこんなに変化しているのですから、ストレスを感じることもきっと多いと思います。
 
「しんどいな」と思った時は、「そうそう、しんどいよね」と自分自身に言ってあげること。
自分自身の言葉だけでは足りないと感じたら、一人で抱え込まず、親しい友人に話してみる、カウンセリングを利用する、などをお勧めします。
 
皆さん良い連休をお過ごしください。
2023年04月30日 13:55

「居場所」について

菜の花のある風景 縮小
私たち心理専門職(ここでは、臨床心理士・公認心理師の両資格を持つ専門職を指します)が行うカウンセリングにおいて、特に重要なテーマの一つに「居場所」があります。
相談者さんから直接「自分の居場所がないことのつらさ、悲しさ」についてお話しいただく場合もあれば、相談者さんの感じている孤独や寂しさ、身の置きどころのなさ、等から「これはこの方の『居場所』についてのお話なのだな」と私たちが感じ取る場合もあります。
 
そもそも「居場所」とは何なのか。「居場所」については、これまでにも数多くの研究がなされ、論文もたくさん発表されています。「居場所」という概念が私たちにとって、とても重要な意味を持つことの証(あかし)だと言えるでしょう。
 
カウンセリングの場面では、「自分を受け止めてもらえる場がない」と感じることを「居場所がない」と表現される方が多いように感じます。
また、「以前は居場所があったが、今はなくなってしまった」ことを話される方もいらっしゃいます。「居場所」とは、失って初めて意識されるものなのかもしれません。
そして「居場所がない」と意識した瞬間から、「居場所のない状態=本当の自分のいない状態」のように感じ、「偽りの自分」をつくって自分を守ろうとする場合もあります。その場合、「偽りの自分」はいるが「本当の自分」はいない、という状態になり、この状態が長く続くことで身体と精神がばらばらになってしまうような感覚に陥るかもしれません。
 
社会の中で生きていく以上、「ありのままの自分」という感覚を持つこと自体、難しいのかもしれません。でも、そんな感覚を持つことができれば、どれだけ生き易くなるか・・・。
 
これからもカウンセリングの中で、皆さんと一緒に「居場所」について考え続けていければと思っています。
2023年03月30日 10:59

こころの傷つきをいやす(ホログラフィートーク)

ホログラフィートーク_コピー
幼少期は親や養育者に頼らないと生きてはいけない時期です。子どもは、周囲の大人たちから大切にされて成長する中で、自分は大切にされる価値ある存在なんだと認識するようになります。
ところが、周囲の大人たちが、精神的、経済的に、さまざまな事情があって、子どもたちを大切にできないこともあります。
大切にされるより、粗末にあつかわれることが多かった子どもたちは、根拠なく、自分は劣った存在だ、自分には価値がないと思いこんでしまったりします。また、強い傷つき体験を繰り返すと、その傷つきが悪さをして、大人になっても「自分はダメだ」という感覚や人への不信感や怖さを引き起こしてしまうことがあります。
 
そのような、処理されないままになっている傷つきを治療する技法のひとつに、嶺輝子先生の考案されたホログラフィートークがあります。
今の自分が過去の傷ついた自分と向き合い、過去の自分と対話しながら傷つきをいやしていく方法です。つらい感情や、痛みやこりなどの身体症状、過食や自傷などの困りごとを入り口に、過去の自分と向き合っていきます。
イメージを使うのも特徴的で、自分の症状を色や形で表現したり、光の柱をイメージしたりします。そうして、自分を許し、自分は価値のある大切な存在であることをイメージの中で体感していきます。

ホログラフィートークを実施するときは、通常の50分カウンセリングに30分カウンセリングをプラスして行います。長い時間がとれない方は、2回に分けて行うこともできます。
ご関心のある方はお問い合わせください。
2023年03月30日 10:46

一般社団法人サポート・シップ関西

住所 〒531-0072 大阪府大阪市北区豊崎3丁目15-5 TKビル2F
代表者 仲埜 三千代・長谷川 由美
Ship相談室 開室時間 月曜~土曜 10:00~19:00
※日曜、年末年始休み

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